トレンド解説
中小企業のオンボーディング課題|環境変化と職場適応を読み解く
※本記事は、毎週配信しているメールマガジン「Do&Be人事通信」の『PICKUP解説』をもとに、初めての方にも読みやすいよう再構成したものです。
今回取り上げるのは、SMBCコンサルティング調査の『2026年職場の環境変化とストレス・パフォーマンスに関する調査』です(レポートは記事末尾に掲載)。本調査は主に企業勤務者を対象に実施されたアンケート形式のデータです(詳細は出典参照)
この調査では、昇進や昇格、配置転換といった人事異動による職場の環境変化が、従業員の状態や業務に大きな影響を与えていることが明らかになりました。
環境変化を経験した人のうち、72.8%がストレスを感じており、27.7%がパフォーマンス低下を実感しています。これは、環境変化が単なる配置の問題ではなく、組織の成果にも直結するテーマであることを示しています。
また、その要因は業務そのものだけではありません。人間関係(33.2%)や心身の負担(32.6%)、自分にできるかという不安(26.5%)といった、適応に伴う心理的な負担が大きく影響しています。
さらに、環境変化に対して十分なサポートを受けていないと感じている人は36.6%にのぼり、適応プロセスへの支援が十分とは言えない実態も見えてきます。
一方で、環境変化を通じて成長を実感している人も一定数存在しています。つまり、環境変化はそれ自体が問題なのではなく、その後の関わり方によって結果が大きく変わるテーマであると言えます。
昇進・昇格、配置転換といった人事上の環境変化は、どの企業でも日常的に行われています。特に人材育成や組織活性化の観点からは、「経験の幅を広げる」「新しい役割に挑戦させる」といった意図で積極的に実施されてきました。
しかし今回の調査が示しているのは、その施策が、必ずしも適切にマネジメントされているとは限らないという現実です。
多くの企業では、誰を昇格させるか、どのタイミングで異動させるか、といった意思決定は慎重に行われます。一方で、その後に発生する「適応のプロセス」については、個人の努力や現場の裁量に委ねられているケースが少なくありません。
しかし実際には、この“配置後”の期間こそが、パフォーマンスに大きな影響を与えています。新しい環境に慣れるまでの数週間から数ヶ月の間に、ストレスが蓄積し、パフォーマンスが低下し、その状態が固定化してしまうこともあります。
つまり、環境変化は「イベント」ではなく、「プロセス」として捉える必要があります。そして、そのプロセスをどう設計し、どう支えるかが、組織としての重要なマネジメント課題になっていると言えます。
また、これは昇進後や配置転換後のフォローだけでなく、新しく組織に入った人が職場になじむまでのオンボーディングや職場適応の支援としても同様にとらえることが出来ます。
調査結果から読み取れる最も重要なポイントは、社員が感じている負担の中身です。
多くの場合、環境変化に伴う課題は「新しい業務を覚えること」にあると考えられがちですが、実際に社員が強く不安を感じているのは以下のような点です。
・新しい職場での人間関係をうまく築けるか
・新しい役割の中で自分が通用するのか
・期待されていることに応えられるのか
これらはいずれも、「業務スキル」ではなく「関係性」や「心理」に関わる問題です。
さらに重要なのは、「何が正解か分からない」という状態、すなわち心理的不確実性です。これまでの環境では通用していたやり方が、新しい環境でも通用するとは限らない。その中で手探りで仕事を進めなければならない状況が、大きなストレス要因となっています。
たとえば中小企業では、前任者からの引き継ぎが十分でないまま業務を任される、誰に何を確認すればよいか分からない、評価の基準が見えないといった状態が起こりがちです。こうした不明確さは、本人の能力の問題というより、適応支援の設計不足によって生じることがあります。
このように考えると、環境変化における課題は、「仕事を教えること」だけでは解決しないことが分かります。むしろ、「関係をつくる」「期待を共有する」「安心して試行錯誤できる状態をつくる」といった、より広い意味でのマネジメントが求められています。
今回取り上げたテーマは、中小企業にとっても非常に重要な示唆を含んでいます。
中小企業では、一人ひとりの役割が広く、環境変化による影響が個人だけでなく組織全体に波及しやすい特徴があります。また、引き継ぎや教育が属人的になりやすく、体系的なフォローが整っていないケースも少なくありません。
そのため、環境変化によるストレスやパフォーマンス低下が、そのまま業績や組織の安定性に直結する可能性があります。
一方で、中小企業には大企業にはない強みもあります。上司と部下の距離が近く、コミュニケーションが取りやすいこと、意思決定が早く柔軟に対応できることなどです。これはつまり、制度を整備しなくても、「日常の関わり方」を変えることで改善できる余地が大きいということでもあります。
今回の調査が示している課題は、必ずしも大掛かりな制度改革を必要とするものではありません。むしろ、日々のマネジメントの質を見直すことで対応可能な領域が多く含まれています。
最後に、この課題に対して、中小企業としてどのように対応していくべきなのかを見ていきます。
ポイントは、「特別な施策を増やすこと」ではなく、「既存のマネジメントの中に組み込むこと」です。
第一に重要なのは、昇進昇格や配置転換を決める際に、その後の『フォローの設計までセットで考える』ということです。例えば、1ヶ月後・3ヶ月後といった節目での対話の機会をあらかじめ設定しておくことで、問題の早期把握が可能になります。
その際は、「業務で困っていること」だけでなく、「誰に相談しやすいか」「期待されている役割をどう理解しているか」まで確認すると、表面化しにくい適応課題を把握しやすくなります。
第二に、「期待の明確化」です。新しい役割において何を求められているのかが曖昧なままでは、社員は不安を抱えたまま仕事を進めることになります。優先順位や評価の観点を具体的に伝えることで、心理的な不確実性を下げることができます。
特に、最初の数か月は「何を最優先にすべきか」「どこまで自分で判断してよいか」「困ったときは誰に相談するか」を明示しておくことが有効です。
第三に、「相談できる状態の設計」です。形式的な面談や制度ではなく、日常的に声をかけられる関係性をつくることが重要です。短い会話の積み重ねが、結果として大きなストレス軽減につながります。
たとえば、定例の1on1を新設しなくても、朝礼後や週次の業務確認の場で「困っていることはないか」「気になっていることはあるか」を継続的に聞く運用でも十分に効果があります。
これらはいずれも、特別なコストや制度を必要とするものではありません。しかし、その有無によって、環境変化が「成長の機会」になるか、「パフォーマンス低下の要因」になるかが大きく変わります。
成長の機会を逃さないように、ぜひ、これらの具体的対応に取り組んでみてください。
参考データ(出典)
『2026年職場の環境変化とストレス・パフォーマンスに関する調査』—2026年SMBCビジネスセミナー「みんなの研修」調べ
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000180047.html
-----------------------------------------
◆本記事のような、調査の読み解きや中小企業での活かし方は、毎週木曜配信のメールマガジン「Do&Be人事通信」でお届けしています。週5分で、人事と組織の“今”を整理したい方はご登録ください。
▶ メルマガ登録はこちら
https://www.do-and-be.com/mailentry/
◆制度を大きく変える前に、「いま何が起きているか」を整理するところからご一緒します。自社の状況を落ち着いて考えたい場合は、お気軽にお問い合わせください。
▶ お問い合わせはこちら
https://do-and-be.jp/contact
調査結果から見えた環境変化の影響
今回取り上げるのは、SMBCコンサルティング調査の『2026年職場の環境変化とストレス・パフォーマンスに関する調査』です(レポートは記事末尾に掲載)。本調査は主に企業勤務者を対象に実施されたアンケート形式のデータです(詳細は出典参照)
この調査では、昇進や昇格、配置転換といった人事異動による職場の環境変化が、従業員の状態や業務に大きな影響を与えていることが明らかになりました。
環境変化を経験した人のうち、72.8%がストレスを感じており、27.7%がパフォーマンス低下を実感しています。これは、環境変化が単なる配置の問題ではなく、組織の成果にも直結するテーマであることを示しています。
また、その要因は業務そのものだけではありません。人間関係(33.2%)や心身の負担(32.6%)、自分にできるかという不安(26.5%)といった、適応に伴う心理的な負担が大きく影響しています。
さらに、環境変化に対して十分なサポートを受けていないと感じている人は36.6%にのぼり、適応プロセスへの支援が十分とは言えない実態も見えてきます。
一方で、環境変化を通じて成長を実感している人も一定数存在しています。つまり、環境変化はそれ自体が問題なのではなく、その後の関わり方によって結果が大きく変わるテーマであると言えます。
環境変化への対応は、適応プロセスとして捉える
昇進・昇格、配置転換といった人事上の環境変化は、どの企業でも日常的に行われています。特に人材育成や組織活性化の観点からは、「経験の幅を広げる」「新しい役割に挑戦させる」といった意図で積極的に実施されてきました。
しかし今回の調査が示しているのは、その施策が、必ずしも適切にマネジメントされているとは限らないという現実です。
多くの企業では、誰を昇格させるか、どのタイミングで異動させるか、といった意思決定は慎重に行われます。一方で、その後に発生する「適応のプロセス」については、個人の努力や現場の裁量に委ねられているケースが少なくありません。
しかし実際には、この“配置後”の期間こそが、パフォーマンスに大きな影響を与えています。新しい環境に慣れるまでの数週間から数ヶ月の間に、ストレスが蓄積し、パフォーマンスが低下し、その状態が固定化してしまうこともあります。
つまり、環境変化は「イベント」ではなく、「プロセス」として捉える必要があります。そして、そのプロセスをどう設計し、どう支えるかが、組織としての重要なマネジメント課題になっていると言えます。
また、これは昇進後や配置転換後のフォローだけでなく、新しく組織に入った人が職場になじむまでのオンボーディングや職場適応の支援としても同様にとらえることが出来ます。
環境変化がストレス増加とパフォーマンス低下をもたらす
調査結果から読み取れる最も重要なポイントは、社員が感じている負担の中身です。
多くの場合、環境変化に伴う課題は「新しい業務を覚えること」にあると考えられがちですが、実際に社員が強く不安を感じているのは以下のような点です。
・新しい職場での人間関係をうまく築けるか
・新しい役割の中で自分が通用するのか
・期待されていることに応えられるのか
これらはいずれも、「業務スキル」ではなく「関係性」や「心理」に関わる問題です。
さらに重要なのは、「何が正解か分からない」という状態、すなわち心理的不確実性です。これまでの環境では通用していたやり方が、新しい環境でも通用するとは限らない。その中で手探りで仕事を進めなければならない状況が、大きなストレス要因となっています。
たとえば中小企業では、前任者からの引き継ぎが十分でないまま業務を任される、誰に何を確認すればよいか分からない、評価の基準が見えないといった状態が起こりがちです。こうした不明確さは、本人の能力の問題というより、適応支援の設計不足によって生じることがあります。
このように考えると、環境変化における課題は、「仕事を教えること」だけでは解決しないことが分かります。むしろ、「関係をつくる」「期待を共有する」「安心して試行錯誤できる状態をつくる」といった、より広い意味でのマネジメントが求められています。
中小企業では環境変化の影響が現場に直接表れやすい
今回取り上げたテーマは、中小企業にとっても非常に重要な示唆を含んでいます。
中小企業では、一人ひとりの役割が広く、環境変化による影響が個人だけでなく組織全体に波及しやすい特徴があります。また、引き継ぎや教育が属人的になりやすく、体系的なフォローが整っていないケースも少なくありません。
そのため、環境変化によるストレスやパフォーマンス低下が、そのまま業績や組織の安定性に直結する可能性があります。
一方で、中小企業には大企業にはない強みもあります。上司と部下の距離が近く、コミュニケーションが取りやすいこと、意思決定が早く柔軟に対応できることなどです。これはつまり、制度を整備しなくても、「日常の関わり方」を変えることで改善できる余地が大きいということでもあります。
今回の調査が示している課題は、必ずしも大掛かりな制度改革を必要とするものではありません。むしろ、日々のマネジメントの質を見直すことで対応可能な領域が多く含まれています。
環境変化は日常のマネジメントでコントロールする
最後に、この課題に対して、中小企業としてどのように対応していくべきなのかを見ていきます。
ポイントは、「特別な施策を増やすこと」ではなく、「既存のマネジメントの中に組み込むこと」です。
第一に重要なのは、昇進昇格や配置転換を決める際に、その後の『フォローの設計までセットで考える』ということです。例えば、1ヶ月後・3ヶ月後といった節目での対話の機会をあらかじめ設定しておくことで、問題の早期把握が可能になります。
その際は、「業務で困っていること」だけでなく、「誰に相談しやすいか」「期待されている役割をどう理解しているか」まで確認すると、表面化しにくい適応課題を把握しやすくなります。
第二に、「期待の明確化」です。新しい役割において何を求められているのかが曖昧なままでは、社員は不安を抱えたまま仕事を進めることになります。優先順位や評価の観点を具体的に伝えることで、心理的な不確実性を下げることができます。
特に、最初の数か月は「何を最優先にすべきか」「どこまで自分で判断してよいか」「困ったときは誰に相談するか」を明示しておくことが有効です。
第三に、「相談できる状態の設計」です。形式的な面談や制度ではなく、日常的に声をかけられる関係性をつくることが重要です。短い会話の積み重ねが、結果として大きなストレス軽減につながります。
たとえば、定例の1on1を新設しなくても、朝礼後や週次の業務確認の場で「困っていることはないか」「気になっていることはあるか」を継続的に聞く運用でも十分に効果があります。
これらはいずれも、特別なコストや制度を必要とするものではありません。しかし、その有無によって、環境変化が「成長の機会」になるか、「パフォーマンス低下の要因」になるかが大きく変わります。
成長の機会を逃さないように、ぜひ、これらの具体的対応に取り組んでみてください。
参考データ(出典)
『2026年職場の環境変化とストレス・パフォーマンスに関する調査』—2026年SMBCビジネスセミナー「みんなの研修」調べ
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000180047.html
-----------------------------------------
◆本記事のような、調査の読み解きや中小企業での活かし方は、毎週木曜配信のメールマガジン「Do&Be人事通信」でお届けしています。週5分で、人事と組織の“今”を整理したい方はご登録ください。
▶ メルマガ登録はこちら
https://www.do-and-be.com/mailentry/
◆制度を大きく変える前に、「いま何が起きているか」を整理するところからご一緒します。自社の状況を落ち着いて考えたい場合は、お気軽にお問い合わせください。
▶ お問い合わせはこちら
https://do-and-be.jp/contact

