人事の視点
若手社員が辞める会社の特徴とは|退職理由から見える職場の共通点
はじめに
多くの企業で、若手社員の早期離職が課題になっています。採用自体が難しくなっている中で、せっかく採用した若手社員が短期間で退職してしまうことは、特に中小企業ではダメージが大きく感じます。
本記事では、若手社員の離職にお悩みの経営者に、以下3点をお届けします。
①離職が起きやすい職場の特徴の整理
②それらへの対策の方向性とポイント
③中小企業での早期離職への向き合い方
若手社員の離職を個人の問題として捉えるのではなく、職場環境や組織運営の構造と言う視点から理解し、対策していくことが、離職問題を解決していくことになります。
若手社員が辞めやすい会社にみられる共通点
若手社員の退職は、個人の性格や価値観によるものと理解されることも多々あります。しかし、厚生労働省あるいは労働政策研究・研修機構による調査を見ていくと、若手社員の離職が多い会社には共通する4つの特徴が見られます。
①仕事内容と期待のギャップ
②育成体制の属人化
③コミュニケーション不足
④労働環境への不満
一つずつ見ていきましょう。
①仕事内容と期待のギャップ
一つ目は仕事内容と期待のギャップです。
たとえば、
・想像していた業務内容と実際の仕事が違う
・自分の役割や仕事の意味が理解できない
・成長している実感を持てない
採用活動では、企業は仕事の魅力や成長機会を伝え、求職者は自分のキャリアの可能性を期待して入社します。しかし、その期待と現実とが本人の中であまりに乖離していると、その若手社員は仕事への納得感や自己効力感を持ちにくくなります。
こういった状況が続くと、仕事へのモチベーションが保てなくなります。
②育成体制の属人化
二つ目は、育成体制の属人化です。
たとえば、
・教える内容や方法が担当者ごとに異なる
・教育の進め方が体系化されていない
・忙しさによって指導の時間が確保できない
中小企業では、若手社員の教育を特定の先輩社員や上司が担当するケースが多く見られます。そのような形自体は問題ではありませんが、教育が個人任せになっている場合、育成方法の質にバラつきが生じやすくなります。
こういった状況では、成長実感を感じられず、自己効力感も低下していきます。
③コミュニケーション不足
三つ目は、職場内のコミュニケーション不足です。
たとえば、
・上司と話す機会がほとんどない
・相談しづらい雰囲気がある
・フィードバックが少ない
若手社員は経験が少ないため、仕事の進め方や判断について上司や先輩に相談する機会が必要になります。しかし、日常的な対話の機会が少ない職場では、疑問や不安を抱えたまま業務を続けることになります。
こういった状況では、自分の仕事の評価や存在感を感じにくくなります。
④労働環境への不満
四つ目は、労働環境に対する不満です。
具体的には、
・長時間労働が続いている
・休暇が取得しづらい
・給与や待遇に納得感がない
雇用動向調査でも、労働時間や休日、待遇に関する問題は、離職理由として一定の割合を占めています。
このような状況は、将来に対する不安を感じやすくします。
退職理由として表面に現れるのは個別の要因であっても、その背景には、このような職場環境や組織運営の『構造的な問題』が存在する場合が多いと考えられます。
(参考情報)
■厚生労働省
「令和5年 若年者雇用実態調査の概況(PDF)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/4-21c-jyakunenkoyou-r05_gaikyou.pdf
■労働政策研究・研修機構(JILPT)
「若年者の離職理由と職場定着に関する調査(報告書PDF)」
https://www.jil.go.jp/institute/research/2007/documents/036/036-00.pdf
若手社員離職対策の4つの方向性
さて、ここまで若手社員が辞めやすい会社にみられる職場の特徴を整理してきましたが、それらを踏まえて、企業はどのような方向で職場を見直していくと良いのか、対策の方向性について整理していきます。
社員の定着というと、新しい研修の実施や人事制度の見直しなど、大きな施策を思い浮かべるかもしれません。しかし、実際には、離職の多くは日常の職場運営の中で生じている問題と関係しています。
そのため、若手社員の離職を防ぐには、新しい制度を導入するよりも、まず職場の基本的なマネジメントのあり方を見直すことが重要になります。
なかでも、次の4点を重点的に改善することが有効です。
①採用段階で仕事の実態を伝える
入社後のミスマッチを防ぐためには、採用段階で仕事の実態を出来るだけ具体的に伝えることが重要です。
採用活動では、企業は仕事の魅力や成長機会を強調しがちです。しかし、業務の難しさや日常的な仕事の内容が十分に伝わっていない場合、入社後に「思っていた仕事と違う」という感覚が生まれやすくなります。
そのため、採用時には仕事のやりがいだけでなく、実際の業務内容や職場の働き方なども含めて伝えることが大事です。
入社前の段階で仕事の理解が深まっているほど、入社後の納得感が高まりやすくなります。
②若手育成の基本方針を共有する
若手社員の育成は、特定の上司や先輩だけに任せるのではなく、組織として基本的な考え方を共有しておくことが重要です。
たとえば、
・入社後の一定期間で経験させたい業務
・若手社員に期待している役割
・成長して欲しい方向性
こういった内容を言語化し、共有しておくだけで育成の進め方は安定しやすくなります。定期的に確認のための勉強会などを開催すれば大変効果的です。
③上司と若手の対話機会を意識的につくる
若手社員が職場に定着するためには、飲み会や食事会などのオフラインでのコミュニケーションも良いのですが、上司や先輩との日常的な対話が重要な役割を果たします。短時間でも良いので、仕事の進め方や課題について話す機会を意識的に設定しましょう。
たとえば、
・今週の業務の振り返りを行う
・困っていることがないか聞いてみる
・今後の進め方を話し合う
こういった機会があるだけで、若手社員は職場の中で自分の状況を理解しやすくなります。
④働き方と評価の考え方を共有する
給与や労働時間などの条件も若手社員の定着に影響する要素ですが、企業によってはすぐに大きな改善を行うことが難しい場合があります。その場合でも働き方や評価の考え方を社員と共有することが有効な対策となりえます。
たとえば、
・評価はどのような観点で行われるのか
・給与はどのような仕組みで決まるのか
・会社は社員にどのような役割を期待しているのか
このような内容が理解できると、社員は自分の状況を受け止めやすくなります。働き方や評価に関する基本的な考え方を共有することも、若手社員の定着を考えるうえで重要な取り組みとなるのです。
若手社員の離職を理解するための3つの視点
離職に関する対策を採る前に重要なことがあります。それは、若手社員の離職をどう受け止めるかです。誰かが離職した時、私たちはその人の固有の理由に注目しがちです。しかし、対策を採るときには、すこし広い視点で状況を捉え、離職の背景を理解する必要があります。
3つの視点を紹介しましょう。
①離職は組織運営のシグナルである
離職を組織運営のシグナルとして捉えることです。離職が特定の部署や年代に集中している場合には特に、組織運営の課題が潜んでいる可能性があります。離職が発生したら、「組織から発せられたシグナル」と捉え、職場の構造に原因がないかを意識的に探ってみましょう。
②個別理由ではなく「傾向」で見る
また、離職者固有の原因を探るのではなく、これまでの離職と共通するパターンがないか、注意深く見てみましょう。「同じ部署で退職が続いている」「入社から数年以内の退職が多い」「似たような理由が繰り返し挙がっている」このような状況がないかを見て、組織の傾向として捉えてみましょう。
③離職理由を掘り下げて考える
退職時に面談をして理由をヒアリングするという取り組みは多くの企業で行われています。とても大切な活動です。ただし、そういった面談では比較的分かりやすい表現が使われることが多くあります。たとえば、「給与」「仕事内容」「人間関係」です。
しかし、その個別の理由をもう一段、掘り下げて考えてみましょう。給与が問題だという背景には、「何が評価されているのか分からない」というモヤモヤがあるかもしれません。仕事が合わないという背景には、「単調で成長できる気がしない」という刺激のなさがあるかもしれません。このような組織運営の問題がある可能性があります。
退職者はなかなか本音を語れないこともあるということを理解して、背景に潜む原因をつかむように意識しましょう。
職場のあり方を少しずつ整える
本記事では、離職が起きやすい職場の特徴とそれに対する対策の方向性、そして離職の捉え方について整理してきました。
若手社員の定着を考えるとき、必ずしも大掛かりな制度改革や新しい仕組みが必要になるとは限りません。それに、中小企業では人事制度や教育体制を一度に整備することが難しい場合もあります。
なので、日々のマネジメントの中で職場のあり方を少しずつ整えていくことが、とても大切です。その地道な活動が、社員が安心して働き続けられる環境づくりに繋がっていきます。
まずは、若手社員の離職という出来事を、職場を見直すきっかけとして受け止めること。その視点を持つことが、これからの組織づくりを考えるうえでの大切な一歩になるのではないでしょうか。

