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管理職不足はなぜ進むのか?|中小企業が見直すべき“支えるマネジメント”

「管理職になりたくない」という社員が増えている背景には、責任の重さだけではなく、支えなしで負荷が集中する働き方があります。今回参照した調査では、一般社員の6割以上が管理職就任に否定的である一方、組織から支援されている実感が高い管理職ほど継続意向が高いことが明らかになりました。管理職不足への対応では、「誰を昇進させるか」だけでなく、「管理職を続けられる環境をどう作るか」が重要になっています。 本記事では、中小企業における管理職不足の背景を整理しています。

※この「トレンド解説」では、気になる人事レポートを取り上げ、その解説と中小企業における対策のヒントを提供しています。今回取り上げるのは、リクルートマネジメントソリューションズが実施した『管理職のあり方に関する実態調査』(レポートは記事末尾に掲載)です。

管理職不足は“意欲低下”だけではない


「管理職になりたがる人がいない」――。

この悩みは、いま多くの企業で共通課題になりつつあります。参照した調査でも、一般社員のうち「管理職になりたい」と回答した人は18.1%にとどまり、「どちらかといえばなりたくない」「なりたくない」を合わせると6割以上となりました。

この結果だけを見ると、「最近の若手は責任を避けたがる」と考えたくなるかもしれません。しかし、実際にはもっと構造的な問題があります。

現在、多くの社員が見ている管理職像は、
 ・常に忙しい
 ・夜も連絡が来る
 ・休日対応がある
 ・責任が重い
 ・部下対応に追われる
という状態です。

さらに中小企業では、
 ・管理職がプレイヤー業務を兼任する
 ・人手不足を埋める
 ・現場トラブル対応を担う
 ・採用や教育まで兼務する
こういったケースも少なくありません。

つまり、「管理職になる=裁量や成長機会が増える」よりも、「負荷が集中する役割」に見えやすくなっているのです。

一方で、現在管理職を担っている人の約6割は、「今後も管理職を続けたい」と回答しています。

ここは重要なポイントです。

管理職という役割そのものが否定されているわけではありません。

むしろ、『人材育成』『組織成果への貢献』『チームを率いること』にやりがいを感じている人は少なくないのです。問題なのは、「やりがいはあるが、持続しづらい」状態になっていることです。

つまり、管理職不足は単なる“意欲低下”ではありません。企業側の役割設計や支援不足によって、「続けられない働き方」になっていることが、本質的な課題だと考えられます。

続けられる管理職は「支援」と「孤独感」が違う


特に注目すべきなのは、管理職継続意向を左右しているのが、「能力」や「成果」だけではなかった点です。

継続意向に強く影響していたのは、
 ・組織から支えられている実感
 ・孤独感の低さ
 ・ワーク・エンゲージメント (仕事への前向きな活力や没頭感)
でした。

例えば、「組織から支援されている」と感じている管理職では、継続意向が65.2%だったのに対し、支援実感が低い管理職では41.6%まで低下しています。 また、孤独感が低い管理職では継続意向が70.2%である一方、孤独感が高い管理職では40.6%となっています。


つまり、管理職を続けられるかどうかは、「優秀かどうか」だけではなく、「一人で抱え込まずに働けるか」によって大きく変わっているのです。

管理職は立場上、
 ・弱音を吐きづらい
 ・部下には相談しづらい
 ・経営側の意図も理解しなければならない
 ・判断責任を負う
という“板挟み”になりやすい役割です。

特に中小企業では、
 ・同じ立場の管理職が少ない
 ・相談相手がいない
 ・経営層との距離が近い
 ・現場対応も兼任する
という状況のため、孤独感が強まりやすい傾向があります。

また、管理職は成果責任だけでなく、感情的な調整負荷も抱えやすいため、支援が不足すると“やりがい”より“消耗感”が上回りやすくなります。

さらに、ワーク・エンゲージメントが高い管理職ほど継続意向が高いことも示されています。


ただし、ここで重要なのは、「気合いやモチベーション」で解決しようとしないことです。

エンゲージメントは、
 ・自分の役割に意味を感じられる
 ・支援されている感覚がある
 ・一人ではない
という環境によって高まりやすいものです。

つまり、管理職支援とは、“組織運営そのもの”の問題だと言えます。

次世代管理職は“上司の姿”を見ている


また調査においては、現在の上司への満足度が高い一般社員ほど、「管理職になりたい」と考える割合が高いことも示されました。

これも非常に重要な示唆です。

社員は、昇進制度、評価制度、キャリアパス…そういった制度や仕組みを通して管理職を判断しているわけではありません。

日常の中で、
 ・上司がどんな働き方をしているか
 ・どんな表情で働いているか
 ・周囲とどう関わっているか
を見ながら、「自分もああなりたいか」を判断しています。

もし管理職が、
 ・常に疲弊している
 ・イライラしている
 ・孤立している
 ・夜遅くまで働いている
状態であれば、管理職が魅力的に映りにくいのは自然なことです。

一方で、「シェアド・リーダーシップ」(管理職だけでなく、メンバー同士も支え合う状態)が機能している職場ほど、管理職意向が高い傾向も確認されています。

中小企業では特に、制度よりも「職場の日常」の影響が大きくなります。

だからこそ、
 ・部下への声かけ
 ・任せ方
 ・相談への向き合い方
 ・失敗時の対応
といった日常行動が、次世代管理職育成そのものに影響します。

管理職育成は、研修だけで完結するものではありません。「この上司のようになりたい」と思える体験を、日常の中で作れているかどうかが重要になってきます。

中小企業が今すぐ見直したい管理職支援の具体策


では、中小企業は何から見直していけばよいのでしょうか。

重要なのは「管理職を強くすること」よりも、「管理職を一人にしないこと」です。特に中小企業では、まず「管理職が一人で判断を抱え込まない状態」を作ることが、最初の一歩になりやすいでしょう。

(1)管理職を“孤立させない”仕組みを作る
中小企業では、管理職同士の相談機会が少なく、判断を抱え込みやすい傾向があります。

例えば、
 ・週1回の管理職相談ミーティング
 ・経営層との定期対話
 ・他部署管理職との横連携
など、“相談できる構造”を意図的に作ることが重要です。

(2)管理職だけに業務を集中させない
管理職不足の背景には、“プレイヤー兼管理職化”があります。

例えば、
 ・会議数の棚卸し
 ・不要な承認フロー削減
 ・報告業務の簡素化
などで、「管理職しかできない仕事」に集中できる状態を作る必要があります。

(3)育成を“管理職一人の責任”にしない
中小企業では、育成責任が直属上司へ集中しやすい傾向があります。

そのため、例えば、
 ・ベテラン社員にも教育役を持ってもらう
 ・業務マニュアルを整備する
 ・定例フォローをチーム単位で行う
など、育成負荷を管理職一人へ集中させないだけでも、日常マネジメントの余白は大きく変わります。

(4)管理職自身にも“相談機会”を作る
管理職は、重要な判断、人間関係、育成の悩み、プレッシャーなど様々な悩みを抱えがちなポジションです。

だからこそ、

 ・経営者との定期対話
 ・外部相談機会
 ・管理職同士の壁打ち
など、“管理職が弱音を吐ける場”が重要になります。

今回参照した調査で見えてきたのは、管理職不足の本質が、“能力不足”よりも、“支援不足”に近いということです。

だからこそ今後は、
 ・管理職を孤立させない
 ・一人で抱え込ませない
 ・支援を見える化する
という視点が、これまで以上に重要になっていくのではないでしょうか。

まとめ:管理職不足の時代だからこそ、“支える組織”が強くなる


本記事で見てきたのは、管理職不足の背景が「本人の意欲」だけでは説明できないということでした。

だからこそ、これからは「管理職を頑張らせる」よりも、「管理職を孤立させない」組織づくりが重要になっていくのだと思います。


中小企業では、一人の管理職が現場を支えている場面も少なくありません。日々の小さな声かけや相談、負荷の分散が、組織全体の安定につながっていきます。

完璧な制度がなくても大丈夫です。

まずは、「管理職が一人で抱え込んでいないか」に目を向けること。
その積み重ねが、これからの強い組織をつくっていくのではないでしょうか。

 
 

参考データ(出典)
管理職のあり方に関する実態調査 ― 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000001536/


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