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人材定着が難しい理由とは|中小企業が見直すべき職場運営

人材不足が続く中、企業の人事課題は「採用強化」から「定着・活用」へと重心を移し始めています。マイナビの最新調査でも、「新規人材の確保」より「人材定着」に強い課題感を持つ企業が多い結果となりました。本記事では、最新の雇用施策レポートをもとに、中小企業でなぜ離職や定着問題が起きるのか、その背景構造と現実的な対応策を整理します。

※この「トレンド解説」では、気になる人事レポートを取り上げ、その解説と中小企業における対策のヒントを提供しています。今回取り上げるレポートは、株式会社マイナビが発表した『企業の雇用施策に関するレポート2026年版(2025年実績)』(レポートは記事末尾に記載)です。

企業の人材課題は「採用」から「定着」へ変わり始めている


マイナビの最新レポートによると、企業が抱える人材課題は「採用強化」から「定着・活用」へ軸足を移し始めています。 

数字を見ると、その変化は明確です。「人材の定着が難しい」と答えた企業は50.9%、「新規人材の確保が難しい」は25.7%。定着への課題感が採用を大きく上回っています。「離職が多い(人材流出)」についても54.5%が強い課題感を持っており、「採用できない」より「採用した人が続かない」という問題の方が、現場の実感に近くなっているようです。

企業が力を入れた施策を見ても、この傾向は明らかです。

2025年に特に重視された取り組みは、有給取得率向上施策、在宅ワーク・リモートワーク制度、企業独自の休暇制度、ウェルビーイング施策など、"働き続けやすさ"に関するものが中心でした。採用施策でも、アルムナイ・出戻り制度やリファラル採用など、既存ネットワークを活用した手法が上位に入っています。

教育投資も増えています。従業員教育費に投資した企業は83.5%、平均投資額は208.6万円と、前年より40万円以上増加しました。

こうした数字が示しているのは、「採用数を増やすこと」だけでは解決できなくなっているという現実です。企業側も、働き続けやすい環境づくりや定着支援を、経営の重要テーマとして捉え始めています。この変化は大企業に限った話ではなく、中小企業においても同様でしょう。

なぜ企業は「採用」より「定着」に苦しむようになったのか


では、なぜ定着がここまで難しくなったのでしょうか。


背景には、「採用後を支える構造」が弱くなっているという問題があります。

かつては終身雇用・年功序列が前提にあり、多少の不満があっても働き続けるのが一般的でした。しかし今は転職が当たり前になり、働き方への価値観も大きく変わっています。働きづらさ、成長停滞感、コミュニケーション不足、過剰な業務負荷といった問題が続くと、以前より早い段階で離職につながりやすくなっています。

一方、企業の現場では人手不足による余力低下が進んでいます。特に中小企業では、管理職がプレイヤーを兼務し、教育担当が固定化し、業務が属人化している状態が起きやすい。「採用した後を支える体制」が整いにくい構造が、もともと存在しています。

結果として起きやすいのが、次のような循環です。

採用をする → 現場負荷が上がる → 教育・フォローが不足する → 定着が悪化する → 再び採用難に直面する

この悪循環から抜け出すために、有給取得率向上施策やウェルビーイング施策、フォロー面談など、働きやすさに直結する取り組みへの投資が増えてきています。「給与や採用数だけでは解決しない」という認識が、企業側にも広がってきたということでしょう。

アルムナイ採用やリファラル採用が増えているのも、定着課題と無縁ではありません。企業文化や働き方をすでに理解している人材は、現場への適応がスムーズで、ミスマッチが起きにくい。採用の入り口から、定着を意識した選択をする企業が増えています。

人材課題は、採用競争の問題から、「働き続けられる運営をどう維持するか」という組織運営の問題へと変わってきているのです。

中小企業では「採った後」にどんな問題が起きているのか


では、こうした構造問題は中小企業の現場でどう現れているのでしょうか。

採用直後の現場を例に挙げると、状況はイメージしやすいと思います。人手不足の企業ほど「早く現場に入ってほしい」という期待が強まります。しかし実際には、教える人が忙しく、誰に聞けばいいかわからない、マニュアルもなければ上司も不在、という状態になりやすい。

新入社員側は「質問しづらい」「迷惑をかけている気がする」と感じ始め、数か月で退職につながることがあります。

管理職側でも疲弊は進んでいます。中小企業ではプレイヤー業務、クレーム対応、部下育成、採用対応を同時に抱えることが多く、面談やフォローがどうしても後回しになります。すると現場に「ちゃんと見てもらえていない」「相談しても忙しそう」という空気が生まれていきます。

一人退職すると、残った社員への負荷集中も起きます。シフトの穴埋め、残業増加、教育担当の固定化、業務の偏り。「また誰か辞めそう」「新人が続かない」という疲労感が現場に積み重なっていきます。

さらに、働き方改革の観点でも、現場とのズレは起きやすくなっています。レポートによると、勤務時間外に連絡があったケースは33.6%に上りました。「急ぎだから仕方ない」「少人数だから仕方ない」という形で続いているケースは少なくありませんが、受け手側は「常に仕事から離れられない」と感じ、それが心理的な負担として蓄積していきます。



定着問題は、「辞める人が増えた」という結果として現れる前に、現場疲弊、教育機能の崩壊、管理職負荷の増大、コミュニケーション不足といった形で、日常業務の中にすでに現れています。

中小企業は「制度追加」より"日常運営"を見直した方が効果が出やすい


定着課題が現場運営の中から発生している以上、大掛かりな制度を増やすより、「日常の関わり方」を少し変える方が、実際には改善につながりやすいケースがあります。

(1)フォローの改善

まず取り組みやすいのが、入社初期フォローのタイミングを固定化することです。中小企業では教育が現場任せになりやすく、フォローの頻度も担当者の裁量に委ねられがちです。入社1週目、1か月後、3か月後といった節目に最低限の対話を設定しておくだけで、早期離職の防止につながることがあります。

ポイントは、「評価面談」ではなく「不安確認」を目的にすることです。「困っていることはないか」「聞きづらいことはないか」を確認するだけでも、現場の小さな違和感を早めに把握できます。

(2)管理職業務の見直し

管理職への業務集中も、見直しが必要なテーマです。部下育成、業務管理、採用対応、クレーム処理が一人に集まる状態では、フォロー不足が構造的に起きやすくなります。日常相談は先輩社員、労務相談は経営側、キャリア相談は上司、といった形で相談先を分散するだけでも、現場の運営負荷は変わります。

(3)休みやすさの改善

「休みやすさ」の改善も、定着面では効果が出やすいテーマです。レポートでも有給取得率向上施策が重点施策として挙げられていましたが、「有給を取ってください」と伝えるだけでは実態は変わりません。属人業務を減らし、情報共有を増やし、簡易マニュアルを整える。「休んでも業務が回る状態」を作ることが先です。

(4)採用方法の補強

アルムナイ採用やリファラル採用が中小企業と相性が良い理由も、定着の観点から説明できます。すでに会社への理解がある人材は、現場適応のスピードが早く、人間関係や仕事理解でのミスマッチが起きにくい。少人数組織である中小企業では、「一緒に働きやすいか」が定着に大きく影響するため、スキルの高さだけでなく、現場になじみやすいか、周囲と連携できるか、長く働けそうかを重視する動きが強まっています。



定着課題は制度や待遇だけで解決するものではなく、日常の働きやすさをどう作るかにかかっています。話しかけやすさ、相談しやすさ、業務偏りの改善、情報共有の仕組み、小さなフォローの頻度。こうした日常運営の質が、今後はより重要になっていきます。

「辞めない会社」をどう作るかが、これからの経営課題になる


今回のレポートから見えてきたのは、企業の人材課題が「採用人数の確保」にとどまらず、「働き続けられる状態づくり」へ移行しているという事実です。

有給取得率向上、ウェルビーイング、教育投資、フォロー面談、アルムナイ採用。多くの企業が、定着を意識した施策へ本腰を入れ始めています。ただ、中小企業では、大企業のように制度や福利厚生を一気に拡充するのは現実的ではありません。

だからこそ重要なのは、「制度をどれだけ増やすか」ではなく、「現場で安心して働ける状態をどう作るか」を地道に見直していくことです。

話しかけやすい雰囲気があるか。放置されていないか。無理な働き方が常態化していないか。休みづらさが当たり前になっていないか。こうした日常運営の積み重ねが、定着力に直結していきます。

人材不足の時代はしばらく続く見通しです。その中で「辞めない会社」を少しずつ作っていくことが、採用力や組織力そのものを底上げしていくはずです。

すぐに大きく変える必要はありません。まずは、現場で働く人が何に疲れているのかを知ること。それだけでも、十分に意味のある一歩になります。




参考データ(出典)
企業の雇用施策に関するレポート2026年版(2025年実績) ― 株式会社マイナビ
https://career-research.mynavi.jp/reserch/20260414_109490/


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