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"言っても無駄"が会社を止める|組織を停滞させる上司の反応

今回取り上げたレポートでは、意見や改善提案が出なくなる背景に「言っても変わらない」という諦めがある実態が見えてきました。本記事では、なぜ職場がこのような状態になるのか、そして解決のヒントはどこにあるのかを、中小企業の現場視点で整理します。

※この「トレンド解説」では、気になる人事レポートを取り上げ、その解説と中小企業における対策のヒントを提供しています。今回取り上げるレポートは、FirstHRが発表した『【上司への本音調査】約3割の中堅が「静かな退職」、若手が「離職・異動」へ?組織を停滞させる"言いにくさ"の正体』です(レポートは記事末尾に記載)。

「言っても変わらない」が最多だった調査結果


今回のレポートで印象的だったのは、「上司への言いにくさ」を感じている人の多さです。正社員の70.4%が、直属の上司に対して何らかの「言いにくさ」を感じた経験があると回答しています。

その中でも注目したいのが、「会社の方針や業務ルールへの改善提案」が最も言いにくい内容だったという点です。ミスの報告、有給休暇の取得、働き方の相談といった内容よりも、「こうした方が良いのでは」という前向きな提案の方が言いにくい、という結果です。

「言いにくい理由」として最も多かったのは、「言っても状況が変わらないと思う」でした。「怖くて言えない」ではなく、"言っても意味がない"という感覚が前面に出ているところが、この調査の核心だと思います。

また、年代による行動の違いも見られました。20代では「言えない」状態が離職・異動の検討に結びつきやすい一方、30〜40代では"静かな退職"の傾向が確認されています。(※レポートでは"静かな退職"を、実際に退職するわけではなく、最低限の業務は行いながら主体的な関与を減らしていく状態として定義しています)

中小企業で「言っても変わらない」空気はどう生まれるのか


たとえば、会議で意見が出ない組織には、いくつか共通した兆候があります。

・質問しても沈黙が続く
・いつも同じ人しか話さない
・異論や改善提案が出ない
・会議中は静かなのに、終了後に不満が出る

こういう状態を「主体性が低い社員が多い」と捉えてしまうケースは少なくありませんが、実際には過去の経験から「言っても変わらない」と感じている可能性があります。

そしてこの空気は、明確な意見の対立やパワーハラスメントがあるから生まれる、とは限りません。むしろ、"後回し"の積み重ねによって静かに形成されていくことが多い。

現場社員が「この業務フロー、かなり非効率だと思うんですが……」と相談すると、「そうだよね。時間ある時に考えてみるよ」で終わる。「このルール、現場では運用しづらいです」という声に「一旦このままでお願い」と返ってくる。

否定しているわけではありません。上司側にも事情はあります。

・他の案件を優先している
・すぐに変えられない理由がある
・そもそも余裕がない

特に中小企業では、管理職自身がプレイヤーを兼務していることが多く、「提案を受け止めて整理する時間」を確保しにくい状況は珍しくありません。

結果として、「とりあえず保留」「曖昧な返答」「検討中のまま止まる」という状態が積み重なっていきます。そうなると社員側も徐々に学習していく。

「言っても後回しになる」
「結局変わらない」
「忙しそうだから今はやめておこう」


そうして、誰かが「意見を言うな」と言ったわけでもないのに、"言わない方がいい空気"ができあがっていきます。

関係は悪くない。強く怒られることもない。会話も普通にある。それでもこの空気は育つ。だから、経営側や管理職側も気づきにくいのです。

「言っても変わらない」が組織停滞につながる理由


「言っても変わらない」という感覚が広がると、組織の"改善の循環"が少しずつ弱まっていきます。


本来、職場では、

現場で違和感が生まれる ⇒ 問題提起をする ⇒ 改善案が出る ⇒ 運用が見直される

というサイクルが繰り返されているはずです。しかし「どうせ変わらない」という感覚が強くなると、"現場での違和感"の段階で止まりやすくなる。

すると、

・同じ問題が繰り返される
・古いやり方が残り続ける
・「前からこうだから」が増える
・小さな不満が蓄積する

といった状態が起きやすくなります。

「言っても変わらない」は、単に発言が減る問題ではなく、組織の改善力や主体性そのものに影響していく問題と捉えるべきだと考えられます。

「言っても無駄」を変えるために、中小企業ができること


中小企業では、風土改革やルールの抜本的見直しよりも、日常の会議や1on1の運営を少し変える方が現実的です。

(1)会議では「後追い」を見える形で残す
「何か意見ありますか?」という問いかけは、なかなか発言を引き出しにくい。

代わりに、

「最近やりづらい業務ありますか?」
「お客様対応で困る場面ありますか?」
「現場でズレを感じることありますか?」

といった形で"違和感"を拾う問いに変えると、現場の声は出やすくなります。

また、それ以上に大切なのが「出た意見をその後どう扱うか」です。

・誰が確認するか
・次回いつ共有するか
・どこまで進んだか

これを議事録や会議メモに残しておくだけで、「言いっぱなしで終わらない」状態を作りやすくなります。

そして、次の会議の時に、

「前回出た件、確認しました」
「ここまで進んでいます」

という共有(できれば意見交換も)を行うことで、提案が組織の中できちんと扱われているという感覚は伝わります。

(2)1on1で"小さいテーマ"を一緒に追いかける
1on1を実施しているなら、先に紹介した会議と同じような運用をすることが大変有効です。

中小企業では、1on1を「業務の進捗確認」として活用しているケースが多いと思います。もちろんそれも重要ですが、"現場の違和感を一緒に追いかける場"として考えてみてはいかがでしょうか。


たとえば、「このやり方、かなりやりづらいです」という話が出たとき、「今は難しい」「前からこのやり方だから」と即座に結論を返して終わるのではなく、「一回整理してみようか」「まず小さく試せるところある?」「次回また聞かせて」とテーマとして設定する。

次の1on1でその続きを聞いたり、対策を一緒に考えたりしながら、数回かけて追いかけていく。

テーマは小さくてもかまいません。意見を受け止めて、一緒に追うこの経験が積み重なると、「言っても無駄」という感覚は少しずつ変わっていきます。

 

今回のレポートが示しているのは、「発言しやすさ」以上に、「発言がどう扱われるか」が組織の主体性や改善力に影響しているという実態です。

だからこそ中小企業では、制度を増やす前に、まず会議や1on1といった日常の場をどう運営するかを見直すことが、現実的な第一歩になります。

「なぜ意見が出なくなるのか」を、経営側も見直す


「会議で意見が出ない」「中堅社員が受け身になっている」。こうした状態を"本人たちの主体性の問題"だけで捉えてしまうと、本質を見誤ります。

中小企業では特に、経営者や管理職の日常の反応が、そのまま組織の空気になりやすい。小さな後回しや曖昧な返答の積み重ねが、「どうせ変わらない」という感覚を育てている可能性があります。

今回のレポートは、「なぜ社員が言わなくなるのか」を社員側の問題だけでなく、"組織側の反応"の問題として捉え直す必要性を示しています。

「最近、現場から意見が出ているか」だけでなく、「その意見を、組織としてどう扱っているか」という視点を持つこと。中小企業の経営者に求められているのは、そういった問い直しではないでしょうか。


最後までお読みいただきありがとうございます。

 

参考データ(出典)

【上司への本音調査】約3割の中堅が「静かな退職」、若手が「離職・異動」へ?組織を停滞させる“言いにくさ”の正体 ― FirstHR

https://first-hr.jp/media/research-report006
 

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