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人事の視点

採用面接から採用活動全体を見直す|準備から定着までをつなぐ5つの手順

「採用面接で、何を聞けばよいのか分からない」

中小企業の経営者から、こうしたご相談を受けることがあります。

面接は採用活動の中でも重要な工程です。しかし、そこだけを切り出して充実させるのは難しいものです。インターネットで検索すれば面接で使える質問例は数多く見つかりますが、自社の状況を踏まえたものではないため、そのまま使うわけにはいきません。

何を聞くかを決める前には、どのような仕事を任せ、どのような人に入社してほしいのかを整理する必要があります。そして面接の後には、聞いた内容を評価し、採否を判断する過程が待っています。さらに採用の目的まで考えれば、採用を決めるだけでなく、入社した人が職場に定着するところまで視野に入れなければなりません。

つまり、採用面接を充実させるには、次の流れをつなげて考える必要があるのです。

1.仕事と職場を知る
2.求める人物像を描く
3.評価観点と質問を決める
4.面接で見極め、伝える
5.入社後の定着まで支える
 
それぞれの手順を見ていきましょう。

手順1 仕事と職場を知る|実際の業務と働く環境を把握する


まず行いたいのが、採用する人に任せる仕事と、受け入れる職場の現状を把握することです。次のようなことを、現場の人と一緒に確認しましょう。

◆どのような仕事を任せるのか
◆仕事を進めるうえで、どのような場面が難しいのか
◆現場で活躍している人は、どのように行動しているのか
◆これまでの採用や入社後の受け入れで、何がうまくいかなかったのか
◆入社する人を、誰がどのように育てるのか

現場を巻き込むのは、希望する条件をすべて採用基準に加えるためではありません。実際の仕事と職場を理解したうえで、採用時に欠かせない条件と、入社後に育てられる部分を切り分けるためです。

手順2 求める人物像を描く|仕事に必要な経験・能力・行動を具体化する


手順1で仕事と職場の現状を把握したら、それを踏まえてどのような人にその仕事をしてもらいたいかを考えます。必要な経験や能力だけでなく、仕事にどう向き合い、周囲とどう関わってほしいかまで具体化していきます。

求める人物像として、「明るい人」「主体性のある人」「コミュニケーション能力の高い人」といった言葉がよく使われます。ただ、こうした抽象的な表現だけでは実際の仕事との関係が分からず、面接官によって解釈も変わってしまいます。

例えば、「少人数の事務部門で、周囲の状況を見ながら優先順位を判断し、必要な確認や情報共有を行いながら、複数の業務を正確に進められる人」というように表します。実際の仕事の中でどのように考え、行動してほしいかがイメージできる形にすることが大切です。

手順3 評価観点と質問を決める|求める人物像を面接で確認できる形にする


求める人物像を具体化したら、次はその人物像に当てはまるかを面接で確認できる形にしていきます。

先ほどの「少人数の事務部門で、周囲の状況を見ながら優先順位を判断し、必要な確認や情報共有を行いながら、複数の業務を正確に進められる人」であれば、例えば次のような観点に分けられます。

• 複数の業務の優先順位を判断できるか
• 正確に業務を処理できるか
• 必要なときに周囲へ確認や共有ができるか

何を見るかが決まれば、次はその情報を得るために何を聞くかです。大切なのは質問例を先に選ぶのではなく、評価する観点から質問を導くことです。

例えば優先順位を判断する力を見るのであれば、「複数の仕事が同時に重なった経験を教えてください」といった質問を用意します。このように、評価する観点ごとに、すべての応募者に共通して確認する質問を決めておくのです。「出来ますか?」と自己評価をきkジュノではなく、「経験を聞く」のがポイントです。

複数の面接官がいる場合は、評価する観点と質問の意図を事前に共有しておくことも大切です。何を確認するための質問なのかが共有されていなければ、同じ質問をしても面接官によって受け止め方が変わってしまいます。

求める人物像を評価する観点に分け、その観点に基づく質問を用意し、面接後に観点ごとに評価する。この一連の流れを、あらかじめ整えるのが構造化面接です。厚生労働省も、採用面接では職務遂行に必要な適性・能力に基づいて質問内容をあらかじめ定め、できるだけ客観的かつ公正に評価するよう示しています。[1] [2]

ここまでが面接前の設計です。次の手順では、用意した質問を使って応募者の経験や考え方を掘り下げるとともに、会社からも必要な情報を伝えていきます。

手順4 面接で見極め、伝える|具体的な経験を掘り下げ、仕事の実態を伝える


実際の面接では、用意した質問を機械的に読み上げるのではなく、応募者の「経験」を聞きながら、回答に応じて話を掘り下げていきましょう。次のような点を聞いていくと良いでしょう。

• どのような状況だったのか
• 本人にはどのような役割があったのか
• 何を基準に優先順位を決めたのか
• 周囲にどのような確認や共有をしたのか
• その結果、どうなったのか
• 経験から何を学び、その後にどう生かしたのか

 ※関連記事:note印象採用から抜け出す面接のコツ

面接後は、「感じがよかった」「受け答えがしっかりしていた」といった全体的な印象だけで結論を出さず、面接中の記録をもとに、決めておいた観点ごとに評価していきます。

複数の面接官がいる場合は、まずそれぞれが評価したうえで、どの回答や行動を根拠に判断したのかを話し合います。異なる見方を持ち寄ることで、一人の印象だけに左右されず、確認できた事実をもとに採否を検討しやすくなります。

ただし、面接は会社が一方的に応募者を見極めるだけの場ではありません。応募者にとっても、会社や仕事を理解し、自分に合うかどうかを判断する場なのです。会社や仕事の魅力を伝え、入社への関心を高めることは必要です。一方で、魅力的な面だけを伝えれば、入社後に「聞いていた話と違う」という認識のずれが生じかねません。[3]

仕事の具体的な内容、期待すること、仕事の難しさ、職場の現状、入社後に受けられる支援などを、できるだけ実態に即して伝えます。応募者の希望や仕事選びの基準、不安に思っていることも聞きながら、双方の理解を深めていきます。

労働政策研究・研修機構の『日本労働研究雑誌』に掲載された論文でも、こうした情報提供は応募者自身による会社や仕事との適合性の判断を促し、入社後の期待とのずれを小さくする考え方として紹介されています。[4]

応募者を見極めることと、会社や仕事について誠実に伝えることは、別々の取り組みではありません。双方が必要な情報を出し合い、入社後の働き方を具体的に考えられる面接にすることが大切です。

手順5 入社後の定着まで支える|面接で得た情報を受け入れとフォローにつなげる


面接を経て入社が決まっても、そこで得た情報が配属先に引き継がれなければ、ここまで積み重ねてきた採用の流れが途中で切れてしまいます。

採用の目的は入社者を確保することだけではありません。入社した人が仕事や職場を理解し、周囲との関係をつくりながら力を発揮し、組織の成長・発展に貢献してもらうことです。

そのため、面接で把握した本人の経験や強み、希望、不安などを、必要な範囲で受け入れ側に引き継ぎます。会社が面接で説明した仕事内容や期待することについても、配属先と共有しておきます。

応募者は面接官個人ではなく、会社から説明を受けたと考えています。それにもかかわらず、入社後に配属先から「その話は聞いていない」と言われれば、会社への不信や戸惑いを生みかねません。

引き継いだ情報を生かし、入社後の説明や仕事の教え方、周囲との関係づくり、定期的な面談などを考えていきます。こうした受け入れは、採用担当者だけでできるものではありません。経営者、採用担当者、上司、現場の社員が情報を共有し、一緒に取り組む必要があります。

おわりに|自社に合った採用の流れを、少しずつつくる


ここまで読むと、「整えることが多い」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。専任の人事担当者がいない中小企業で、最初から精緻な採用制度や立派な面接マニュアルをつくるのは、現実的ではない場合もあるでしょう。


すべてを一度に完成させる必要はありません。まずは今回採用する人にどのような仕事を任せ、どのような役割を期待するのかを、経営者と現場で話し合うところから始めてはいかがでしょうか。仕事と期待する役割が見えてくれば、面接で何を確かめる必要があるのかも考えやすくなります。

中小企業には、経営者と現場の距離が近く、実際の仕事を知る人たちが顔を合わせて話しやすいという面もあります。それは、採用の流れをつなぐうえで強みになり得るものです。

ぜひ、面接を含め、一連の採用の流れを見直してみてください。


参考資料
[1]リクルートマネジメントソリューションズ 「これからの時代の採用要件と面接評価―何を・なぜ・どのように評価するか」
https://www.recruit-ms.co.jp/research/study_report/0000001455/

[2]厚生労働省「公正な採用選考の基本」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/newpage_56780.html

[3]厚生労働省「採用選考自主点検資料」
https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/assets/pdf/basic/02.pdf

[4]労働政策研究・研修機構「採用時点におけるミスマッチを軽減する採用のあり方」
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2007/10/pdf/060-075.pdf

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