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若手社員をどう育てる?|「3年後の活躍」から考える育成計画

若手社員の育成を、どのくらい先まで見据えて考えていますか?

まずは目の前の仕事を覚えてもらい、慣れてきたら少しずつ任せる範囲を広げていく。

こうした進め方は自然ですが、日々の業務に追われるなかで、将来どんな仕事を担える人材になってほしいのかをじっくり考える機会が持てていない職場もあるかもしれません。

では、若手社員自身は、入社後どのくらいで活躍したいと考えているのでしょうか。

株式会社マイナビが2026年10月に発表した「マイナビ2027年卒 大学生キャリア意向調査9月<入社後の働き方>」によると、入社後に活躍し始めたい時期は「3年目」と答えた学生が43.4%で最多でした。1年目から3年目までを合わせると80.1%に上ります。[1]

注目したいのは、その理由です。1年目での活躍を望む学生には「早く仕事を任されたい」「早く出世したい」という思いが見られます。一方、2年目・3年目を挙げた学生では「仕事を覚えて慣れるまでに、それくらいはかかると思う」という回答が多くなっています。

活躍までに必要な期間を、学生なりに見積もっていることがうかがえます。

もちろん、これから社会人になる学生への調査であり、入社後の社員の意識をそのまま表すものではありません。それでも、多くの学生が3年目までの活躍を思い描いているという結果は、企業が育成を考えるうえで見逃せないものです。

そこで本記事では、若手社員の育成を考える一つの時間軸として「3年間」に目を向けます。3年後にどんな仕事を担い、どのように活躍していてほしいのか。その姿から逆算して、必要な経験や支援を考えていく方法を、育成計画の立て方として整理します。

目の前の指導だけでなく、成長の道筋を考える


中小企業では、日々の業務を通じたOJTが人材育成の中心になることも少なくありません。実際の仕事のなかで知識や技能を身につけられ、個々の状況に合わせて指導できる点は、OJTの大きな利点です。

ただ、その時々の業務や担当者の判断だけで育成を進めていると、目の前の仕事を覚えることが中心になり、将来に向けた成長の道筋が見えにくくなる場合があります。

この課題を考えるうえで参考になるのが、厚生労働省が提供している「キャリアマップ」です[2]。

キャリアマップは能力開発の標準的な道筋を示すもので、各段階の習熟に必要な年数の目安や、次の段階へ進むために重要となる経験・実績などを整理しています。その目的として、従業員が将来のキャリアに目標意識を持ち、具体的な行動につなげることや、上司と部下のコミュニケーションを活性化することなどが挙げられています。


ここで押さえておきたいのは、目指す姿を設定し、そこに至るまでの時間や経験を考えるという視点です。

たとえば、3年後に担当業務を自律的に進められるようになってほしいなら、1年目には何を身につけてもらい、2年目にはどんな仕事を任せていくのか。

少し先の姿を描くと、段階的に経験してほしい仕事を整理しやすくなります。目指す姿と成長の道筋が見えていれば、会社と社員で育成の方向性を共有しやすくなる点も利点です。


なお、厚生労働省が3年間という期間を推奨しているわけではありません。必要な期間は、職種や仕事内容、本人の成長速度によっても変わります。大切なのは、少し先の活躍する姿を見据えて育成を考えることです。

育成計画は「何を教えるか」より「何を経験してもらうか」


育成計画というと、習得する知識やスキル、受講する研修を一覧にしたものをイメージしがちです。もちろんそれらも必要ですが、仕事で力を発揮できるようになるには、知識を身につけるだけでは足りません。

実際に仕事を任され、自分で考えて判断し、ときにはうまくいかなかった経験も振り返る。こうした積み重ねによって、仕事を遂行する力が育ちます。先ほどの厚生労働省のキャリアマップでも、各段階へ進むための重要な要素として経験や実績が示されています[2]。

育成の道筋を考えるときは、習得すべき知識や技能に加えて、『どのような経験を積む必要があるのか』という視点が欠かせません。

飲食店の店長を育成する場合を考えてみましょう。

接客や調理の知識・技能は重要ですが、それだけで店舗全体を運営できるようになるわけではありません。スタッフへの指示や人員配置、売上・原価の管理、店舗で起きた問題への対応など、店長に必要な仕事を段階的に経験していく必要があります。

最初は店長の指示を受けながら進め、徐々に自分で判断する範囲を広げていく。そうした経験を通じて、学んだ知識や技能が店舗運営で発揮できる力に変わっていきます。また、仕事を任せるだけでなく、本人がどこまでできるようになったのかを確認し、必要な助言や支援を行うことも欠かせません。

育成計画は、研修や教育の予定表というより、『社員が成長するための仕事の経験と支援を組み立てるもの』と捉えてみてはいかがでしょうか。

仕事の経験を成長につなげるには、何を任せるかだけでなく、その経験をどう振り返り、次の行動に活かすかも重要です。この点については、経験学習モデルなどをもとに、以下の関連記事で紹介しています。

関連記事:人材育成は「経験設計」から始まる|OJTだけでは育たない理由

3年後の活躍から逆算する育成計画の4ステップ


では、実際にどう進めればよいのでしょうか。ここでは、厚生労働省のキャリアマップや職業能力評価シート[3]の考え方も参考にしながら、飲食業の店舗スタッフとして入社し、3年間で店長として活躍することを目指すケースを例に、4つのステップで整理します。

STEP1 3年後の活躍する姿を描く

最初に考えるのは、3年後にどんな仕事を担えるようになってほしいか、という点です。

たとえば「一人前の店長になる」という目標では、人によって捉え方が異なります。そこで、次のように具体的にします。

「店舗の売上や利益、スタッフの配置・育成、日々の業務運営を把握し、必要な判断や改善を主体的に行える」

このように、実際の仕事の場面を思い浮かべられる表現にして、目指す姿を明確にします。あわせて、会社が期待する役割だけでなく、本人が店長という役割にどんな関心を持っているのか、どんな力を身につけたいのかも確認しておきたいところです。

STEP2 必要な仕事の経験を洗い出す

次に、その姿に近づくためにどんな経験が必要かを考えます。

先ほどの店長育成であれば、たとえば次のような経験が考えられます。


• 接客・調理など、店舗の基本業務を習得する
• 時間帯責任者として、スタッフへの指示や業務の進行管理を経験する
• シフト作成や人員配置に関わる
• 売上・原価などの数値を確認し、課題を考える
• 新人指導やスタッフ育成を担当する
• 店舗で発生した問題への対応や改善活動を経験する

ここで大切なのは、経験させたい業務を並べるだけで終わらせず、その経験を通じてどんな力を身につけてほしいのかまで考えることです。

シフト作成であれば、勤務表を作ること自体ではなく、繁閑やスタッフの能力を踏まえて人員を配置する判断力を身につけることが目的になります。

経験の機会を用意するだけでなく、上司や先輩がどう関わるかも整理しておきます。

STEP3 3年間の道筋を描く

必要な経験が整理できたら、それらをどんな順番で経験してもらうかを考えます。たとえば、次のような計画です。

1年目:店舗の基本業務を習得する
接客・調理、開店・閉店作業などを経験し、店舗の基本業務を安定してこなせることを目指します。習得した業務については、新人への指導も経験していきます。

2年目:店長を補佐し、店舗運営の一部を担う
シフト作成や発注・在庫管理、売上・原価管理の補助、スタッフ指導などを経験します。店長を補佐しながら、店舗運営の一部を主体的に担えることを目指します。

3年目:店長として店舗全体の運営を担う
売上・利益管理、人員配置・育成、業務改善などに取り組みます。店舗全体の状況を把握し、運営に必要な判断ができることを目指します。

※上記は育成計画の考え方を示すための仮想例であり、3年目の店長就任を標準的な成長モデルとして示すものではありません。

ポイントは、担当する業務を増やすだけでなく、自分で判断する範囲や責任を持つ対象を、段階的に広げていくことです。

支援のしかたも、それに合わせて変えていきます。たとえば2年目のシフト作成では、最初は店長と一緒に案を作り、慣れてきたら本人が作った案を店長が確認する、といった具合です。

各年の目標を細かく決め込むよりも、3年後の姿に向けてどんな経験を積み重ねていくのか、その見通しを持てるようにしておくことが重要です。

STEP4 本人と共有し、成長に合わせて見直す

計画は、作って終わりではありません。ここで参考になるのが、厚生労働省の「職業能力評価シート」です[3]。

このシートは、職務の遂行に必要な能力をチェックし、現在の習熟状況や、次の段階に進むために足りない点を把握するためのものです。本人と上司がそれぞれチェックすることで認識の違いを確認し、フィードバック面談を通じて、成長に向けた行動改善や自己啓発につなげる方法が紹介されています。この考え方は、育成計画の運用にも活用できます。

たとえば、2年目の目標として「シフト作成を主体的に進められる」を設定したとします。本人は問題なくできていると感じていても、店長から見ると、スタッフの能力や繁閑を踏まえた配置にはまだ支援が必要かもしれません。

逆に、店長は成長を評価しているのに、本人が自信を持てていない場合もあるでしょう。そうした認識の違いを確認し、何ができるようになったのか、次にどんな経験が必要なのかを話し合うことが大切です。

本格的な評価シートを導入しなくても、育成計画に掲げた仕事について、本人と上司がそれぞれ習熟状況を確認するだけで、対話のきっかけになります。確認した内容をもとに、次に任せる仕事や支援の方法を考えていきます。

3年間の育成計画を柔軟に運用するために


ここまで、3年間の育成計画の考え方を紹介してきました。注意したいのは、計画を作ること自体が目的にならないようにすることです。

入社時点では、本人の強みや適性が十分に分からないこともあります。実際に働くなかで思いがけない能力が見つかったり、本人の希望が変わったりすることもあるでしょう。中小企業では、事業環境や人員体制の変化によって、任せられる仕事が変わることもあります。

だからこそ、3年間の計画を細かく固定する必要はありません。

3年後の目指す姿と、各年に経験してほしい仕事を大まかに整理しておき、直近の目標や仕事の任せ方は、本人の成長に合わせて具体化していく。そして定期的に振り返り、必要であれば計画そのものを見直す。この形が現実的です。

また、社内のすべての職種・階層で制度を整備し、一度に導入する必要もありません。たとえば、まず一つの職種について、3年後の姿、必要な経験、各年の目標、上司の支援を紙一枚に整理してみます。それを本人と共有し、日々の仕事で使いながら見直していく。そんな始め方でもよいと思います。

育成計画は、社員を一定の型にはめるものではなく、『一人ひとりの成長を支えるための道具』として活用したいものです。

若手社員の成長と活躍が、企業の力になる


多くの若者が入社3年目までの活躍を望む一方で、新卒社員の早期離職は、企業にとって依然として大きな課題です[4]。

入社後の数年間は、仕事を覚えて自分の可能性を広げていく時期であると同時に、この会社で働き続けるのか、自分の将来をどう描くのかを考える時期でもあります。だからこそ、その期間にどんな成長の機会を提供できるかを企業として考えることには、大きな意味があります。

人材育成の目的は、社員が仕事を通じて力を身につけ、それを発揮して、企業の成果に貢献できるようになることです。社員の成長が会社の成長につながる。そうした関係を築いていきたいものです。

その方法の一つとして、3年後の活躍する姿を描き、そこに至るまでの経験や支援を計画的に考えることは、中小企業にとっても有効な一手になるのではないでしょうか。大掛かりな育成制度や研修体系を整えることだけが、人材育成ではありません。

まずは、自社の若手社員に3年後どんな活躍を期待するのかを思い描き、本人とも共有するところから始められます。

日々の仕事のなかにある成長の機会を、少し先の未来につなげていく。そんな育成のあり方を、ぜひ自社でも考えてみてください。



参考資料
[1] 株式会社マイナビ(2026年10月28日)
「マイナビ2027年卒 大学生キャリア意向調査9月<入社後の働き方>」
https://www.mynavi.jp/news/2026/10/post_55056.html

[2] 厚生労働省
「キャリアマップについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07792.html

[3] 厚生労働省
「職業能力評価シートについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08021.html

[4] 厚生労働省
「新規学卒就職者の離職状況」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00011.html


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